中国の野生動物取引が投げかける人類への問題点を考える

2020年1月30日にWHO世界保健機構が新型肺炎(Covid-19)の感染拡大が国際的な緊急事態としてから1年が経つ。ここ数十年私達は過去に一度も接触したことのない全く新しいウイルスにさらされているのはなぜか。人獣共通感染症、すなわち動物と人間の間で相互に伝染する病気と野生生物の取引市場の関連性があるのだろうか。我々、人間が以前は近づかなかった野生動物とその生息場所に接近しすぎたのだろうか。

WHOの専門家は、中国・湖北省・武漢で最初に確認された新型コロナウイルス感染症は、期限が依然として明らかになっていないものの、野生動物を扱っていた武漢の市場でのコウモリが発生源となった可能性が高いとしている。またこの新型コロナウイルスは人間が感染する前に、いったん別の動物の感染を経ている。重症急性呼吸器症候群(SARS)と中東呼吸器症候群(MERS)もやはりコウモリが発生源と考えられているが、いずれも人間が感染する前にそれぞれ、ハクビシンとラクダの間で広まっており、人間にとって新たな感染症の70%以上は動物、とくに野生動物に由来しているのだ。という事は、野生動物取引市場は人間にとっては新しい病気の発生源になる恐れがあることに間違いはない。

世界4位の違法市場・中国の野生動物取引に注目

こうした野生動物の取引を支えているのは動物の体の一部に病気を治す力があると信じる中国伝統医学産業がある。中国では54種類の野生動物が食用として合法的に取引されているというが、専門家によると実際のところ中国での生きた野生動物を取引する市場の規模の実態は明らかになっていない。なぜなら多くの動物が密漁され、違法に輸出入されたのちに国の許可を受けた農場に運ばれるからだ。よってその数は恐らく数百を超えると言われている。

世界が新型コロナウイルス感染症・パンデミックになると、メディアはこぞって中国の野生動物市場で売られる痛々しい動物たちの写真や生きたままスープ鍋でゆでられるコウモリの動画を流し、世界中の人々に、中国では誰もが生きた野生動物を買って食べているという印象を与え注目を浴びた。その結果、中国の伝統薬や珍味に使われる野生動物の需要が絶滅危惧種の国際取引を活性化させており、永続的な禁止が人間の健康を守るだけでなく、野生動物の違法取引を終わらせる為の重要な一歩になるとして中国の野生動物取引の永久禁止の声が高まった。こうした言葉を受けて中国政府は危機が収束するまで野生動物の取引を禁止すると発表してはいるが、2002年のSARS流行の際も、中国政府は同様の禁止令を出し、禁止令発表の数か月後には規制を緩め取引を元にもどしている。

驚くべきことに野生生物の違法取引は年間200億ドル(約2兆1800億円)規模であり、薬物、人身、偽造物に続く、世界4位の巨大違法市場だ。中国の1部の地域では食用や漢方薬用のヘビやネズミの繁殖は一部の貧困層の人々にとっては所得拡大の手段の1つ。よって中国国内では野生動物に対しての取引再開を求める声は鳴りやまない。一方で今回のパンデミックが、絶滅危惧動物を珍しいペットや食材、薬として持続不可能な方法で利用していることを終わらせるための警鐘にならなくてはいけないという声と対立している状態が続いているのだ。

アジアでの野生動物取引への意識調査

世界自然保護基金(WWF)が行った香港・日本・ミャンマー・タイ・ベトナムで新型コロナウイルス感染症と野生動物取引に関する意識調査(GlobeScan)がある。この調査は人間社会においてリスクの高い感染症と野生動物取引市場との関連性。それに対する各国の意識と政府の対策を市民が指示する意思があるかどうかを調べるもので、対象国は各国・行政区からそれぞれに1000人づつ性別、年齢人口構成を反映し、無作為に選出。WWFの専門家とGlobeScanの調査員が用意した質問にオンラインで答える形で行われた。(野生動物を家畜を除く陸生動物(哺乳類・鳥類・爬虫類)と定義され水産物は含まれていない)

その結果、違法または規制が不十分な野生動物の取引市場を閉鎖する対策に関してはミャンマー・タイ・ベトナム・香港で実に90%以上の人が指示するなどの高い危機意識が認められた一方で日本人の回答は、こうした市場閉鎖が対策として有効であると考える人がアジア4つの地域を同程度の割合でいるにも関わらず、その措置を実施しる政策を支持する人の割合が少ないという結果が出た。

恐らくこの結果の裏には、対策としては支持するが日本には関係のない対策だという認識が多くの日本人の間にある事だとうかがえる。果たしてそうだろうか・・・違法または規制が不十分な野生生物取引市場の問題は決して日本と無関係ではないのではないだろうか。

日本の野生動物「ペット産業」

確かに。日本では野生動物の肉がすぐ手に入る市場は日常生活の中では見られない。しかし生きた野生動物の輸入や販売は「ペット」利用を目的に現在も数多く行われている事を認識しているだろうか。日本で開かれているペットの販売フェア。大規模なものでは数万人がある集まり、鳥類や爬虫類、哺乳類など、さまざまな生物が取引されているではないか。

十分な管理体制が整っていない日本のペット取引が、感染症を媒介する危険性についても課題を指摘されている。ペット目的で国内外で密猟された動物や、密輸された動物が国内取引市場に紛れ込んでも、区別することができないなど、多くの問題があること。つまり日本にも、こうした規制管理の不十分な野生生物の取引市場は存在しており、そこには国内に存在していなかった感染症拡大のリスクが潜んでいる可能性が、十分にあるということなのだ。

だとしたら、中国の野生動物取引市場を傍観していられるだろうか。感染症のリスクという観点から見た野生動物の消費抑制や、違法またはまたは規制が不十分な野生動物の取引の排除を求めるという意識がアジアの国同様に高く意識するべきではないだろうか。

もちろん、途上国の地域社会には必要な食糧やたんぱく源として野生動物に頼っている人々がいる。このような場合は持続可能性に配慮しつつ、許容すべきものだが、密漁や密輸を通じて絶滅の恐れの高い主を単に嗜好品として消費したり、食品の安全管理の適切な手段を取らずに利用することは今や国政的なリスクに他ならない。

今、こうしたパンデミック渦において、中国の野生動物取引市場の存在が私たちに投げかけている問題点は、中国だけの問題ではないということである。野生動物の過剰な利用、開発の為の自然環境の破壊、野生動物の生息地域に近づきすぎた人間への警告であり、その事が新しい病気を蔓延させる要因となっているという事を改めて考え直す時期にきているのではないだろうか。

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