危機感のない非言語メッセージ「緊急事態宣言」を発し続ける日本政府

日本は2回目の緊急事態宣言が発令されており、1ヵ月の延長が発表された。
しかし新型コロナウイルスの感染拡大に慣れ、自粛疲れも広がる国民の危機感は、昨年4月の前回宣言時ほど高くはなく、自粛の動きは鈍っているとみえる。
政治家の度重なる4人以上で会食をしたという事実、政治家が国会休憩中にマスクから鼻をだし、アゴまでおろしている姿が報道され、記者会見をする時に壇上でマスクを外すといった行動が、言葉ではない形で「大丈夫だ」という心理的メッセージを発しているため危機感が全く届かないのである。
まずは情報発信する人たち自身が国民にやって欲しい事を実践しなければ伝わらない。
危機感が伝わらないその原因は、政治家の発する「非言語メッセージ」が大きい。

そうならなかった感染爆発

2020年春の時は「感染爆発」「オーバーシュート」という恐怖メッセージから未知のウイルスへの危機感・恐怖感が人々を自制させ、多くの人が外出を自粛していた。
がしかしここで問題なのは、実際はそうならなかったという事。
国民1人1人の努力によってならなかったわけだが、人間は1度「ならなかった」と経験してしまった為、もはや脅すようなメッセージを発信しても意味がなくなってしまった。

具体性のないメッセージ

政府が「勝負の3週間」と呼びかけたのは昨年11月末、日本では感染が減るどころか、その後も急激に上昇を続けた。
勝負とは何の勝負か。何をすればいいのか。このメッセージには具体性に欠けている。
同じように、小池都知事は会見のたびに「5つの小」「ひきしめよう」などの標語。
わからないメッセージは人々には届かないし、浸透していかない。
「3密」がうまくいったのは、最初の標語だったからというだけのこと。
同じような小手先の手法を繰り返しても、逆に批判が集まってしまうだけなのだ。

自分のことと認識させる

数字ではもはや脅威を感じにくくなったこういった状況下においどうやっては、いかに「自分のこと」と認識させるかではないだろうか。
例えばドイツ・メルケル首相の言葉「単なる統計ではなく命の話」「祖父母との最後のクリスマスにしないため」などと呼びかけた演説。
このように自分の問題ととらえさせるという事

シンプルで具体的なメッセージ

そしてシンプルで具体的なメッセージを発信すること。
イギリスの使う標語は日本のようにころころ変わらない。
ロックダウン下は春から同じ。「Stay home・Protect NHS・Save Lives」(家にいよう・NHSを守り・命を救おう)だ。
ロックダウンが外れると「Stay Alert・Control the Virus・Save Lives」(警戒しよう・ウイルスをコントロールしよう・命を救おう)この2つだけ。
わかりやすい。やる事は変わってもしたい事は同じ。命を救う事。子供でも分かる。

共感力を示す

そして人の心を動かす演説には共感力が大切だ。
限界が近い中、時短営業をさせられている飲食店、休みもなく懸命に働く医療従事者、楽しみたい若者。おのおのに悲痛な思いがあるのだ。
数字や背景の説明だけでなく、そうした思いに理解を示した上で頭を下げてこそ、『一緒に頑張ろう』という気持ちになるのではないだろうか。

行動変容をしなくなった理由とは

行動変容という言葉は今はまるで聞かない。これは昨年、春の緊急事態宣言の時によく聞かれた言葉だが。
そもそも政治家自身が行動変容をしていないのだからもう誰も使えない。
なぜ人々は行動変容しなくなったのか。

【1つめの理由】
コロナ対策で求められていることの多くは、そもそも社会的生物である人間の「仲間と集いコミュニケーションを楽しむ」という習性に反している。
それをするなと言われて約1年。
もう散々、我慢したからもういいだろうという心理、いわゆる「コロナ疲れ」の心理が働く。
【2つめの理由】
これまで感染してこなかった人は、「旅行もして、会食も飲み会もしたけど感染しなかったから大丈夫」という根拠のない自信を持つようになってしまう。それがここ数か月の個人的体験によって強化されてしまっている。
【3つめの理由】
多くの人にとって、新型コロナウイルス感染症自体を実感できていない。
自分が感染していない人は、新型コロナ感染症の苦しさはわからない。医療崩壊と言われてもピンとこない。
特に日本は感染者への差別から声を挙げにくい。それでは、感染した苦しさは伝わらない。
もっと医療従事者の声、感染した人からの声を大切にすべきだろう。
【4つめの理由】
特筆したいのが、日本はメッセージを発する人が多すぎる。
総理大臣。厚生労働大臣。分科会。知事。一体何人の人間がメッセージを発しなければならないのか。
誰の言う何を聞けばいいのか。
人は心理的や行動的にコストの大きな行動を回避しようとする。
つまり簡単に言うとアレコレと情報を矢継ぎ早に叫ばれても、聞くのが面倒臭いのだ。
マスク着用は守られる。なぜなら行動コストが低い。つまりは簡単だから。
マスク会食は浸透しない。つまりは行動コストが大きく面倒だからだ。

このように、人間の行動原理に焦点を合わせた時、政策に工夫しないと、たとえ緊急事態宣言を出したところで、その効果には限界があるどころか、経済をさらに圧迫するだけに終わってしまう。

人間の行動には合理的な判断よりも感情的な影響の方が大きいという人間の心理を考えた時、忍耐のような理性的判断に頼るよりは、感情に訴えかけるようなメッセージを工夫する必要がある。


われわれは毎日の暗いニュースや恐怖メッセージによって感情的に疲弊している。
明るい未来を感じさせるようなメッセージ、人々が笑顔になれるようなメッセージに工夫する必要がある。

政府や専門家の側も、今までと同じ方法が通用すると楽観すべきではないであろう。
多くの人々の行動変容を促すためには、それに応じた知識とスキルが必要があり、以上のような事を今一度真剣に考えるべかもしれない。

新型コロナウイスル対策 企業・組織における初動対応ガイドライン

経営者・危機管理担当者・感染対策担当者・事業継続担当者・広報担当者のための資料です。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事