英・史上最大のワクチン接種計画はじまる

イギリスでは12月2日にファイザー社とビオンテック社開発のmRNAワクチンの緊急使用申請が許可され、12月8日より世界で初のCovid-19 ワクチン接種が始まった。数か月以内に数千万人に接種する事を目的としてワクチンの大量買収を始め、慈善団体のSt John Ambulance、ライフガード、航空会社のスタッフ、看護・医学生など、NHSのロールアウトを支援するボランティアは既に30,000人。と同時に軍が支援をし、スポーツスタジアムや会議場などが急ピッチで予防接種センターに変わっている。

イギリス史上最大のワクチン接種計画

イギリスでは専門家で構成される「ワクチン接種共同委員会(JCVI)」が政府から独立したかたちで存在し、英政府の健康相に専門的助言を与える仕組みが整っている。同委員会はどの人々からファイザーのワクチンを接種すべきかを科学的証拠に基づいて検討し政府への助言。英政府はただちにこの助言内容に基づき、英国の国営医療機関(NHS)を通じ、英国史上最大のワクチン接種計画を開始した。

まずは第一段階の重要な基本方針として、初期段階での集団免疫は目指さない。ワクチン接種の目的を健康悪化や死亡を最小化する為に感染リスクの高い国民・重症化リスクのある国民を徹底的に守る事と定義。
なぜなら集団免疫を目指し流行を抑制するには、かなり大多数の国民に効率的にワクチンを接種させる必要がある。しかし大多数の国民にワクチンを接種するには相当な時間はかかるし、正直、現時点ではワクチンがどの程度、集団免疫に効果があるかはまだ不明という理由からである。

ワクチンはどこから来ているのか・・・

先日の初回ワクチン投与量は、ベルギーのプールスにあるファイザーの工場で製造されたものを使用。このワクチンはこれまで開発された事のない技術の遺伝物質を使用して作られているため、厳しい温度設定があり、劣化を防ぐために非常に低温の-70℃で保管する必要があるのは知られている。よって慎重に管理されたディープフリーズデリバリーチェーンで輸送する必要があることを意味するのだが、ワクチンが工場を出る前に、195本のバイアルのバッチがトレイに入れられ、特別な超低温サーマルボックスの中に入れられる。それぞれに約5000回分の入ったボックスには、貨物の位置情報を確認するため、GPS温度監視デバイスが取り付けられ、飛行機またはトラックで英国に輸送された。

しかし英国は2020年12月31日でEU離脱の移行期間が終了。それに伴い、ベルギーからの輸送のロジスティックスが今後の課題となるであろう。イギリスとEUが現在進めている交渉の結果、自由貿易協定の締結などが実現しても、移行期間が終わる来年からは通関手続きが新たに必要になり、イギリスとEUの国境周辺で渋滞など交通の混乱が見込まれているからだ。このため、イギリス政府は軍用機などによる輸送も検討しているとみられていて、接種が本格化する年明け以降、低温での管理が必要な大量のワクチンをどのように計画どおりイギリス国内に運ぶのかが課題になりそうだ。

次に英国内にワクチンを6ヶ月保存できる特殊な冷凍庫と保管場所が必要になる。この保管施設から、各地のGPにドライアイス輸送し、各施設で1ヶ月までドライアイス保存。使うときには溶かして冷蔵庫で保管、3日程度までで使い切る。またCovid-19 に対する十分な免疫を獲得するには、最初のワクチン接種から3週間後に2度目の接種の必要性があることも少々この問題を複雑にする。今のところ、医療人員が限られている中での、特殊な保管と厳密なスケジュールが必要なワクチンを全国の介護施設で大規模に接種していくのは簡単な作業ではない。

希望もある。まもなく承認されるであろうモデルナ社のワクチンは、スイスまたはスペインから空輸予定。ファイザーのように、それも冷凍する必要があるが、標準的な冷凍庫の温度である-20℃で可能だ。英国製のオックスフォード-アストラゼネカワクチンは、冷蔵トラックまたはクールボックスで輸送でき、通常の冷蔵庫の温度で保管できるため、更に取り扱いが簡単になる。よって今回のワクチン接種計画はまだ第一段階であり、オクスフォードのワクチンなど他のワクチンが承認された後に、ワクチン接種共同委員会は新しい指針を示すものとみられている。

イギリスに到着したワクチンはその後・・・

イギリスに到着したワクチンは1か所に集められ、医療ロジスティクス会社によって品質がテストされる。これらの安全なサイトでは、各ボックスが開かれ、開梱され、温度データをダウンロード。このプロセスには12〜24時間かかり、品質が承認されると、ワクチンはNHSサイトよって注文できるようになる。発送まで冷凍庫に保管。ワクチン接種場に到着すると、ワクチンはNHSスタッフによって冷蔵から取り出され数時間をかけて解凍。そして生理食塩水で希釈してから6時間以内に患者に投与する必要がある。また各地のGPでは、ワクチンを通常の冷蔵庫温度での保管に制限時間があるため3-5日で975回の投与を終了させなければならない。

どのようにして接種が行われるのか・・・

保健省は、時間の経過とともに、ファイザー・ビオンテック社以外のワクチンがより多くの人が1度により多くの場所で接種を受けることができるようになるというが、英国公衆衛生サービス(PHE)はファイザー・ビオンテック社のワクチンは取り扱いが複雑な為、病院にて、イギリス人口の約4文の1相当を占める9つの優先度の高いグループリストより接種を開始することにした。

優先順位は以下のとおり

  1. すでに始まっているケアホームのスタッフ・在住者
  2. 80歳以上の高齢者と医療従事者
  3. 75歳以上の高齢者
  4. 70歳以上の高齢者と重症化リスクの高い基礎疾患のある人
  5. 65歳以上
  6. 16歳から64歳までの基礎疾患のある人
  7. 60歳以上
  8. 55歳以上
  9. 50歳以上と続く。

ワクチン接種に応じる事は今のところ義務ではないが接種率は高くなると推測されている。NHSは現在、年間約1400万回のインフルエンザワクチンを投与しており、普段からインフルエンザワクチンの接種率は高い。同様にイギリスではCovid-19 ワクチン接種を多くの人が前向きにとらえている。国内では大手の調査会社「Yougov」が1048人を対象にワクチンを接種するかとの問いに、訳6割が接種を望むと回答した。さらに4303人を対象にワクチンを信頼するかとの調査では約7割が信頼していると答えた。


今、イギリスでは変異型のウイルスが猛威を振るい、ロンドンを含む多くの地域でTier4規制が発表され、実質上のロックダウンを行っている。クリスマスもキャンセルされた。ワクチン接種が始まり、ボリスジョンソン首相は医療従事者やワクチン開発に携わった科学者らに感謝の意をまずは示し、引き続き感染対策として規制を緩めるわけにはいかない「ともにウイルスに打ち勝っていこう」と国民を励ました。
筆者はどの優先順位にも当たらないため、恐らくは来年春以降にGPから手紙がくるであろう。我々、日本人での体での臨床実験は不十分であると耳にするが、私は受ける予定でいる。このmRNAワクチンを調べてみると安全性は高いと思うからである。これについてはまたの機会にご案内しよう。
このワクチン接種計画は来年7月をめどに全国民の接種を目指しているというが、保健省の大臣・マット・ハンコック氏はこれはワクチンの製造状況と運搬に関する課題によるとした。トンネルの向こうに見えた小さな光あったが、出口まではまだまだ長い道のりが必要なようだ。

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