英・変異種ウイルスについてわかっている事

今、世界が注目し、警戒しているイギリスで発見された2つの変異種。1つはイギリス南東部ケント州で9月に発生したと思われるもの。この変異種が今、猛威を振るっており、12月20(日)からロンドン周辺の大部分で警戒規制がTier4に引き上げられ、実質上のロックダウン中である。
もう1つは南アフリカから持ち込まれたものでつい先日2つの症例が確認された。ロンドンとイングランド北西部出身のこの2名は南アフリカへの渡航歴はないものの、過去2週間以内に同国に渡航した人と接触しており、現在、南アフリカへの渡航規制、また同国への渡航者・接触者はただちに自己隔離するよう求められている。
この2つの変異種ウイルスは酷似しているが同一の変異種ではないと事はわかっており、異なる変化をしているものだという事がわかった。この新しい変異ウイルスは、数か月のうちに、英国の一部で変異ウイルスが存在しない状態からどのように広まったのか。これまでにわかっている事。

ウイルスの変異とは・・・

変異とは、生物やウイルスの遺伝子情報の変化を指す。変異が起こると、ウイルスが感染しやすくなったり、治療薬が効かなくなったり、ワクチンが利きにくくなったり、というウイルスの性質の変化が起こりえる。これまでに、抗ウイルス薬であるレムデシビルが効きにくいという変異ウイルスも報告されている。この新しい変異種に関してはウイルス表面にあるスパイクの1部のたんぱく質が変異した事によって感染性が増したものと思われている。

こうした変異ははじめてなのか・・・

もうご存知のように答えはNOである。ウイルスは常に変異をしており、これまでのところ、わかっているだけでCovid-19 は月に1-2回程度のペースで変異を繰り返しているという。現在のCovid-19 ウイルスの多くは、1月に中国で見つかったもの比べ約20箇所の変異が起こっている。しかし今回発見された変異ウイルスは既に29もの変異が確認されており、これは想定されていた変異よりも早い速度で変異が起こったことを示す。

ではなぜ、今回の変異種が警戒されているのか・・・

まずは非常に強い感染力があるという事。また特に60歳以下の若年層に広がっているという事である。9月に初めて発見され、11月にはロンドンの症例の約4分の1がこの変異ウイルスだったのだが、12月中旬には症例のほぼ3分の2に達している。イングランド南東部に集中していたこの変異ウイルスによる感染例は、ウェールズで11月1日以降に採取された4,733例のウイルスの解析では20例がこの変異ウイルスの亜種であることが分かっており、すでにイギリス内で広がっている可能性がある。そして既に世界へ。日本を含めデンマーク。オランダ。ベルギー。オーストラリア。イタリア。香港。シンガポールでも見つかっている。

ボリスジョンソン首相が言及した数字は変異種は最大で70%伝染性が高く、これにより実行再生産数R値が0.4増加する可能性があると述べた。しかし、当初、人々の行動によるものとウイルスによるものを区別するのは困難ではという意見があった。イギリスでは2回目のロックダウンが12月初めに解除され、クリスマスを前にして通常より多くの人が一気に外出をし、大きな人々の動きがあったからだ。しかしここ数日の4万人に近づく勢いの感染者数をみても、これは変異種のウイルスによるものというのは確かなようである。

まだ重症化率・死亡率に対しての関連性については研究段階であるが、感染者数が増えれば恐らく重症者や死亡者も増えていくことになるであろう。各国の医療体制によっては、更に入院患者が増え病床のひっ迫。医療崩壊が確実に起こる。この点を世界では懸念しているという事だ。残念ながら、この変異種の発生によりほぼ確実にこのパンデミックがより長引き、より多くの人々が感染することが予想され、最終的にはより多くの命を奪う可能性があるだろう。

そもそもこの変異種はどこからきたものか・・・

いまの所わかっていない。まずは、この変異ウイルスはCovid-19 ワクチンの接種開始よりも前に観察されている事から、ワクチン接種によって生じたものではないという事。デンマークではミンクに感染、猫などのペットにも感染した例が報告されているが、そういった動物由来の可能性。しかし「系統樹」と呼ばれるウイルスの家系図のようなものがあるらしいが、それを見るとこの変異ウイルスはかなり離れたところに位置しており、中間のウイルスがほとんどないという。という事は動物を介したいう可能性は低いという事か。イギリス政府は変異ウイルスと動物の間に明確な疫学的関連性がない事をヨーロッパCDCやWHOにも報告している。または別の国からインポートされた可能性もあるが、いまのところ有力なのは、免疫系が極端に弱った患者の体内でCovid-19 ウイルスは数週間・数ヵ月に渡ってウイルスが持続感染する事があり、体内で変異が出現したというもの。長時間Covid-19の感染を持続した患者の体内では、ウイルスが多くの変異体に変異する時間があり、免疫から逃れる為に変異したウイルスが生き残り、他の人にも広がったためだと考えられている。

この変異種ウイルスに現在接種の始まっているワクチンは有効か・・・

今のところ心配はない。もしもワクチンを変更しなければならない場合があったとしても、ファイザー/ ビオンテック社またモデルナ社のいわゆるmRNAワクチンは、遺伝物質の鎖であるmRNAに基づいており、1日か2日で再設計できる。オックスフォード/アストラゼネカワクチンもスパイクタンパク質の遺伝暗号を使用しており、迅速に再設計することができるという。また正しい免疫反応をチェックするためのテストなどの次のステップも承認と製造の前に数週間以内に行うことができるとしている。しかしながら、突然変異が続くと、懸念事項が出てくる。これだけ変異の早いこのウイルスは恐らくワクチンにも適応すべき道を進んでいる可能性があり、それに向けて最初の数歩を踏み出したのでのではないかという事。だとしたら人々に感染し続ける間に、ワクチンに適応できるウイルスに更に変異する可能性が出てくる。これは、ウイルスで起こっていることの最も懸念される要素であり、それがまさにインフルエンザでも同じことが言える。毎年、変異して現れる為、定期的にワクチンを更新していく必要がでてくるのだ。

ではこの変異種にはどのように対応すべきか・・・

このイギリスにおける変異ウイルスの流行を受けて、英・ウォーリック大学医学部のローレンス・ヤング教授は 基本的な感染防止対策は変わらない。マスク・手洗い・社会的距離。これが変異種の感染予防にも役立つと呼びかけた。また隔離と渡航規制によって新たな変異種の拡大は抑制できるとしている。

イギリス公衆衛生局(PHE)はCovid-19 を含む呼吸器感染症の流行モニタリングを日々行っている。ただ、日本国内ではイギリスほど頻繁にCovid-19 の遺伝子配列が調べられているわけではないといわれる。日本国内における変異ウイルスの広がりを把握するためには、Covid-19 感染症症例からウイルスの遺伝子配列の解析を強化することも重要であろう。

このCovid-19 は絶対になくならない。Covid-19ウイルス に限らずにどのウイルスも常に変異を繰り返す。ウイルスは他生物の細胞を利用して自己繁殖しなくては生き残れない。しかしウイルス自身の毒性が強すぎて感染した人を死に至らしめ、自らも自己繁殖ができなくなってしまったらウイルス自身が生き残っていけない。過去の感染症においても、毒性を抑え感染力を増していく変異を繰り返しているではないか。ウイルスも生き残りをかけて戦っているのだろう。

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